シン・エヴァンゲリオン感想:二人の綾波(アヤナミ)の結末

レビュー

エヴァンゲリオンシリーズの完結作となる、シン・エヴァンゲリオンについての感想をお届けします。ネタバレを含みますので、未見の方はご注意ください。

リアタイ世代のエヴァ卒業式

わたしはいわゆる「リアタイ」世代と呼ばれる昔からのファンで、公開日である3月8日の初回(午前8時上映)に気合いを入れて観に行きました。


2回目は自分なりに咀嚼し消化をするため、3回目はネットで考察を見てから新たな視点で観るため、4回目はIMAX上映を観に行きました。締めに5回目を観に行ったので、そこそこコアなファンだと自覚しています(笑)。

初回の上映が終わった後、非常に心地よい読了感、充足感に包まれました。ストーリーはもちろん、アニメーションや音楽も素晴らしく、アニメ史上に残る渾身の一作だと思います。


エヴァンゲリオンは内容がわかりにくいため(謎解き要素を残すためわざとそうしてある部分もあります)、一般的にはとっつきにくく感じる人も多いと思います。シンエヴァでもいつも通り、ストーリー中盤以降でよく分からない設定や用語が多数出てきますが、細かいところはよく分からなくてもエンディングを迎えてみんながスッキリ出来る、そんな作品となっています。

わたしもエヴァンゲリオンについてすべて理解できているわけではないのであまり偉そうなことは言えませんが、細かい部分や分かりにくかった部分は考察されている方が多くおられますので、そちらを参考にしつつ自分なりの解釈を見つけるというのがエヴァの楽しみ方の一つです。

エヴァンゲリオンについて語り出すととても長くなるので出来るだけシンプルに述べますが、まず「よくぞ完結してくれた!」というのが率直な感想です。

というのも、新劇場版は4部作なのですが、前作であるQでストーリーが急転してまったく先の展開が読めない状態だったのです。あと1作でどうやって完結させるのか、ずっと一ファンとして楽しみにしていたのですが、劇中で「すべてのカオスにケリをつけます」とミサトが語っていたそのままに、見事に完結し大団円を迎えることとなりました。

シンエヴァがハッピーエンドかどうかについては観る人によって捉え方が異なるかもしれませんが、少なくともTV版や旧劇場版と比べれば多くの登場人物に救いがあるストーリーでした。特にアスカはこれまでTV版、旧劇場版と散々な目に遭ってきたので、最後の最後で幸せになれそうで本当によかったです(笑)。

そして最も大事なのは、鑑賞者である我々ファンが救われた点でしょう。旧劇場版での「気持ち悪い」から24年、ようやくエヴァファンたちに救済の時が訪れました。自分を含め、「みんなよかったね、おめでとう!」と思ったファンは多いのではないでしょうか。そういった点でシンエヴァの終劇は、庵野総監督率いる制作スタッフやキャスト、作品に携わるすべての関係者、そしてすべてのファンにとってエヴァンゲリオンからの卒業式となりました。まさに「さようなら、すべてのエヴァンゲリオン」の一言に尽きると思います。

綾波レイとアヤナミレイ(仮称)、二人の結末

わたしはTV版のころからずっと綾波レイ推しなのですが、彼女(彼女たち)の結末はどうなったのでしょうか。

綾波レイは「破」のラストシーンで初号機に取り込まれてしまったままで、Qでは登場しませんでした(黒いプラグスーツのアヤナミレイ(仮称)は、綾波レイとは別の人物です)。

シンエヴァではストーリー序盤でアヤナミレイが第3村での生活を通して、ひとりの人間として多くのことを学び成長していく姿が描かれていました。ちなみに「○〇ってなに?」とヒカリたちに質問を連発しているのは、幼児の「なぜなぜ期」における行動と似ていて、未知の物事を積極的に吸収しようとしていることを表現しているのだと思います。アヤナミレイは「6番目のクローン」という設定で、旧ネルフ施設以外のことをほぼ知らない(オリジナルの綾波レイと違い、本も読まない)ので、外の世界に戸惑いつつもその生活を新鮮だと感じ、楽しんでいるようでした。


様々な経験を通して精神的に成長していく過程で、「破」の綾波レイと重なる部分が表現されていて、たとえば公衆浴場で「ポカポカする」と言っていたのはまさに「破」のレイを彷彿とさせる台詞でした。

また、プラグスーツによる生命維持の限界が近付いたとき、アヤナミレイは涙を流します。「涙、泣いてるのは、わたし」。これはTV版第23話「涙」で登場した台詞と一言一句そのままで、TV版の綾波レイともリンクしていた、つまりアヤナミレイは本来の「綾波レイ」を取り戻しつつあったのでした。

そんなアヤナミレイも生命維持の限界を迎え、シンジの目の前でLCLとなって消滅してしまいます。その際プラグスーツの色が白に戻り、最期のときに綾波レイに戻ることが出来たのだと思います。

一方オリジナルの綾波レイは初号機の中で14年間の時を過ごし、劇中終盤でようやく再登場を果たします。登場は「破」以来なので、現実の月日で12年ぶりの登場でした(涙)。

綾波は14年間シンジが初号機に戻ってくるのを待っていました。シンジと再会し、その役目を終えた綾波。ラストシーン手前での彼女は、「つばめ(ツバメ)」と書かれた人形を抱いていたので、消滅直前に「ツバメ、もっと抱っこしたかった」と言っていたアヤナミレイの思いを引き継ぎ、その希望を叶えようとしていたのだと思います。綾波レイとアヤナミレイ、二人の願いが叶う結末で「よかったね、レイ!」と思わずうるっと来てしまいました。

エヴァンゲリオンシリーズはシンエヴァをもって完結となりましたが、すべての登場人物の物語の結末がこの作品に詰まっていると思います。未見の方には是非この作品を観てみてほしいところですが、いきなりシンエヴァから入ると意味不明すぎるので、新劇場版「序」、「破」、「Q」を観てから入ることをおススメします!

最後までお読みいただきありがとうございました。

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